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2010.9. 3
消防士に、アナウンサーを重ねたとき

「けいざいナビ北海道」の

「知りたい!会社魂」のコーナーのリポートの仕事というのは

放送には直接反映しなくとも

個人的にこころに残るエピソードがたまっていく、

貴重な仕事である。

 

先日、消防車を造っている札幌の会社を紹介するため、

日高のある消防組合を訪ねた。

その会社が納めた消防車の前で収録を終えたあと、

司令(上司にあたる)の方との雑談の中で

こんな話を伺った。

 

「ここのような地方の消防署では

私たちは、なんでも屋みたいなことが求められるんですよ。

火災の際に消火作業をするとか、災害対策をするとか、

事故に遭った人を救助するとか、

消防士“らしい”仕事は一部分で、

床下浸水した家の泥水を取るのを手伝うとか

ちょっとした地域の人のニーズに応えるような仕事が大半。

のどかでいいですね、という人もいるけど、

若い消防士たちにとってみれば

拍子抜けもするだろうし、意欲がそがれるようなこともあると思うんです。

もちろん、『それも立派な仕事だ』とは教えるし、

本人たちだってそう思ってはいるはずだけど、

ふと我に帰ったときに

都会の消防署で、専門的な消防技術を磨いている

同じ歳の連中と自分を比べて、気持ちが下がってしまうことは

きっとあると思います。

みんな、希望に燃えて、

意識を高く持って消防士になっているのは

痛いほど伝わってくるんですよ。

そんな彼らの熱意がしぼまないように、というか

向上心が続くように

いろいろ考えてあげるのが

私たちの大事な役割なんじゃないかと

思っているんですよ」

 

「いやあ、そっくりそのまま

『消防士』を『アナウンサー』に置き換えることの

できる話ですね」

思わず返してしまった。

 

「自分はもっとできる」「こんなはずじゃない」

若かりし頃、全く同じことで

じりじりとした焦燥感に身悶えし、

やり場のない苛立ちを周囲にぶつけたこともある。

多少なりとも分別がついたと思っている今でも、

画面を通じて釈然としない感情が湧くことはある。

 

行き場のない向上心―。

そんな感情に揺らぐときは

こう思うようにしている。

 

行き場は、ある。

お前の頭の中に、こころの中に、肚(はら)の中に。

自分の居場所を嘆く不毛な時間があるのなら

その時間を、自分の“器”を広げるために使えばいい。

 

空想に逃げることもなく

向上心を枯らして妥協することもなく、

そうやって使った時間は

自分を裏切らない。

器が広がれば、道も自ずから広がる…はずだ。

 

会うことはできなかったが、その消防署にいる

ある地元出身の新人消防士は、

小学生の頃から

しょっちゅうその消防署に一人でやってきて

「僕、絶対にここの消防士になるんだ」

と言い続けたという。

帰りの車中、

初心を貫き、地元のために汗をかく

彼のことに想いを馳せた。

 

今回取材した会社については

あすの「けいざいナビ北海道」で

放送します。