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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

会社魂の魂⑥ キョクイチ(旭川市)

かつて、朝の情報番組を担当していたころ

「年末の市場から生中継」といえば、

この時期に欠かせない、そして出演者としては

「覚悟を決めて乗り越えねばならない修羅場」

と位置付ける仕事であった。

 

一瞬にして買付価格と落札相手が決まる

セリの現場。

まして年末年始に備えた「大商い」の場。

市場に漂う空気は、熱気を超えた「殺気」すら感じるものだ。

そんな市場に、自分たちの都合で

生中継用のケーブルを張り、カメラマンやら音声マンがうろちょろするのは

迷惑千万な話だ。

まして、大きな声を張り上げながらリポートするアナウンサーなぞは

邪魔な存在以外の何ものでもない。

そんなアウェーの雰囲気たっぷりで

「年末おススメ情報」を努めて明るくお伝えすることは

大いなるプレッシャーとの戦いであった。

 

そんな記憶をよみがえらせながら訪ねた

旭川の民間市場「キョクイチ」。

市場の「顔」であり、かつてのあのプレッシャーを

もっとも思い出させてくれるところでもある鮮魚市場は

拍子抜けするほど、整然としている。

「実は各卸さんとは、前日までに

価格と仕入れの種類や量は話がついていて、

テレビで見られるような活気のあるセリは

あまり行われないんです。

安定した仕入れをめざして

しっかりとした準備を進めてきた成果でもあるんですけど、

市場っぽく映ってないですよね」

 

”らしい”セリの風景は、となりの青果コーナーで見られた。

若きセリ人が、テンポとリズムを操りながら

絶妙の空気を醸しながらセリを進める。

久しぶりに見たが「カッコいい」とうなりたくなる光景だ。

ちなみに彼は

その後訪ねた事務所で、セリとはまた違った小気味よさで

敏腕商社マンのごとく

矢継ぎ早に電話をかけていた。

 

旭川を中心とした、道北の台所を支えるキョクイチ。

日本全国から農水産品が集まっているが

最近は、台湾、韓国などからも

野菜、果物などを買い付けている。

 

「卸の方々のニーズに応えるのが私たちの仕事です。

欲しいという方がいらっしゃる限り、

旬であるかどうかに関係なく

常に商品が提供できなければなりません。

今までは、国内の生産地の中で

季節に関わらず、たいていの農産品は調達できたんですが、

最近は難しくなりまして、

新たな販路をアジアまで広げるという判断をしています。

理由は、全国的に生産者が減少していることが大きいですね。

いままでは国内のどこかに、

はざまを埋めてくれる生産者がいらっしゃったんですが、

今は1年中すべての季節を埋めることが厳しいんです。

北海道だけでなく、

農業後継者不足の問題は、

日本全体のことなんですね」

 

案内してくれた役員の方は

少し遠くを見ながら話した。

 

年末。

当たり前のように活気のある市場、

当たり前のように活気のある店、

当たり前のように活気のある食卓。

そんな風景の中に吹く冷風が

わずかばかりであらんことを祈った。

 

「キョクイチ」の会社魂は

12月16日の「けいざいナビ北海道」で。