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2013.1.24
翼を広げる者たちへ

日本の冬季競技におけるお家芸、

伝統の種目と言われるスキージャンプ。

国際舞台におけるその歴史は

対ヨーロッパの伝統国という

圧倒的な「アウェー」に立ち向かい

乗り越えようとしてきた歴史である。

 

スキー競技に国技ともいうべき伝統とプライドを持ち、

またそれゆえに

競技環境の優位性を長らく維持し続けてきている

彼の国々の猛者たちを相手に

日本は、対抗しうるほぼ唯一の

「ヨーロッパ以外の国」として

孤軍奮闘で戦ってきた。

 

だから、日本人が積み上げてきた勝利の歴史は重く、尊い。

個人、団体含め

3つのオリンピック金メダルという事実は

その数字以上の偉業と位置付けられてしかるべきだと思う。

 

そんな日本のジャンプをとりまく環境は

その栄光の重みを反映するものではない。

 

企業チームに所属して競技ができている選手は

ほんの一握り。

五輪代表になった経験のある選手でも

契約を打ち切られ、スポンサー探しに奔走することがある。

アルバイトをしたり、期間労働をしたりしながら

資金をため、冬の跳躍に備える選手は

特に最近、珍しくなくなってきた。

短くなる練習やコンディション作りの時間を

イメージトレーニングや食事制限で補い

懸命に冬の空に飛びだすときを待つ。

 

高校3年、大学4年は、さらに大きな岐路だ。

学校の変わり目が、そのまま競技との別れになることも

珍しいことではない。

試合を「就職活動」と公言しながら出場し、

懸命に結果を出して

卒業後も競技が続けられる環境を、

己の肉体で作りだそうとしている大学生もいる。

 

そんな待ちに待った瞬間も

一瞬の気まぐれな風で、台無しになることもある。

吹雪になれば、試合そのものがなくなってしまう。

雪がなければ始まらない、

自然があってこその競技だが、

自然は、彼らの思いや、流した汗を斟酌しない。

切なさや儚さが、そこには常に漂っている。

だが、それ以上に

「大空を飛ぶ」という人類の根源的な欲求を実現させる

その昂揚感と、解放感が漂っている。

ジャンプ場は、そんな空間である。

 

時速90キロ以上の速度の中で

数十センチの幅、コンマ何秒のタイミングで空中に飛び出し、

全身に浴びる風のわずかな動きの中で微調整を加えて

己の体を「翼」にし、

ときには200メートル以上も滑空した上で

白い壁のように迫りくる斜面に

2本のスキーのみで着地する―。

外から見ると、華麗に空を飛んでいるように見える

その姿の内側は

筋力、技術、感性、集中力、

あらゆる面で極限の繊細さが濃縮されている。

 

「アスリート」という言葉にはおさまり切れない

不思議な能力を備える存在・スキージャンパー。

彼らの飛躍を、生き様を、知って欲しい。

そんな思いで、今年も実況したいと思います

 

「第24回 TVh杯ジャンプ大会」は

1月26日 午後4時放送です。