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2013.5.16
会社魂のたましい⑲ HOP(札幌市)

「たぶん俺は、こういう建物の中で生きていくことはない」
コンクリートむき出しに代表される
「無機質さ」が
スタイリッシュな建物とされたバブルの時代、
そうしたものに憧れた大学生の自分はしかし、
直観と、諦念のようなものをいつも抱いていた。
同時にそれは、劣等感でもあった。
「俺はトレンドを理解する感受性がない」
そしてそれは
ものごころついたときから
いつも山と、森と、土がすぐそばにあった、
自分の育ってきた環境にあるのだ、と思っていた。

 
高級注文住宅を全国で手掛ける
札幌のHOP(ハウジング・オペレーション・アーキテクツ)。
 
本社ビルの隣にあるモデルハウスに案内される。
そこはかつて見上げていた
“スタイリッシュ”を絵にかいたような本社ビルとは
正反対のたたずまい。
玄関を開けた瞬間から
木の香りに包まれると、
あらゆるところで木を意識させられる…いや、
正確に言えば
“木に抱かれている”ことに、無意識になる空間である。
 
「100年先でも、街の文化として存在する家を建てる」
そう語る石出和博社長は芦別出身。
“生粋の”建築者ではない。
異業種で社会人生活を始め、
海外に派遣されているときに
日本の伝統的建築に“目覚め”
一念発起して建築会社に転職。
自らの理想の建築を求め
宮大工の技術を学ぶ。

学んだのは、技術だけではない。
その伝統技術を生み、育てた
日本の世界観まで学びを広げ、
かつ、それを形にしてきた。

HOPは、北海道の原木の確保、製材、流通、植林、
そして設計、建築を協業化した
独自のシステムを持っている。
「森を建てよう」というキャッチフレーズは、
このシステムと、その背景にある哲学の
表現の一つだろう。

「材料である木を育てる人、切り出す人、
木に関わる人みんなが
幸福になるようにならないと
住む人が幸福になる家にはならないですから」

ただ、そこに立っているだけでも、
全身から放たれる熱を感じるような人である。
当然、発することばには、
単に思いを伝える以上の
「言霊」ともいうべき力が宿っていると感じる。
足腰をふんばりながら話をしていないと、
強い引力に引き込まれてしまう、
そんな感覚になる人だ。

「住まいは、その人の人生そのものです」
「私たちは、人生をかたちにするんです」
矢継ぎ早に発する言霊には
凄みのようなものがこもっていた。
その凄みに圧倒されながら
ふと思い出した。
 
大学生のころの東京で感じた、
あの違和感。
あれは、ふつうの感覚だったのだ。
幼いころから自分の身の回りを包んでいた
原風景が絶たれた空間に
違和感を覚えるのは、自然なことだったのだ。
劣等感や、諦念は、不要な感情だった。
あるがままの、肯定されるべき価値観だったのだ。
 
と、柄でもなく深い思索にふけってしまったのは
きっと、木に抱かれているからなのだろうと思った。
自然の懐の中にいるような、
心の平静まで得られる。
そんな家なら、十分「街の文化」だろう。
 
取材を終え、はっと現実に戻る。
残りの人生かけても手が届かない家だ、という
口惜しさは残るものの、
さりとて後味の悪さはみじんもなく、
心地よさに包まれていた。
 
映像を通じて、
その心地よさはどれほど伝わるだろう。
HOPの会社魂は
5月19日の「けいざいナビ北海道」で。