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2013.5. 8
会社魂のたましい⑱ 玉屋食品(小樽市)

「まあ、君は10年ちょっとしか

北海道に住んでないからしょうがないかな」

と言われても反論できないもどかしさ。

恥ずかしながら、知らなかった。

その存在も、かつて流れていたCMも。

重箱の隅をつつくようなちょっとしたことを

したり顔でしゃべることに悦楽を覚える人間としては

地団駄を踏みたいことである。 

 

そうした「したり顔気分」をさらにくすぐるのが

そのネーミングである。

「しゅうまい揚げ」

そう聞いたら、ふつうはこっちでしょ。

丸くて、薄皮で包まれていて、

中に肉とか海老とか入ってて、

真ん中のグリンピースがアクセントの。

それがカリッと揚がってる…

そう思うでしょ。

 

というイメージを見事なまでに裏切って

形も味も、全く異なる小樽の味

「しゅうまい揚げ」。

未知の食べ物との出会いというドキドキ感に

ほどよく肩すかしを食らわされる。

そのギャップこそが、「したり顔」の真骨頂。

そこに見事にはめられた悔しさと

明日から「したり顔」ができるという喜び。

めくるめく快感がかけめぐる取材である。

 

このニクい存在の「しゅうまい揚げ」を作っているのが

玉屋食品。

「玉屋」という屋号は、もともとは飴を作っていたことに由来するそうだ。

「巷で評判のアイデアマンだったそうです」と

孫である松村真希専務がいう

創業者・松村万吉の最大のヒット作が

しゅうまい揚げである。

試作に試作を重ね、

「いける」という手ごたえをつかむと、

小樽の街を

他の商品と合わせてリヤカーで売り歩き、

市場調査を進めた上で

手ごたえが確信に変わったところで

商品化を進めたそうである。

 

「しゅうまい揚げ」が世に出て半世紀。

今、創業者のバトンを受けて疾走している

松村専務は

週3回は食卓にしゅうまい揚げがのぼる環境で育った。

「これが“しゅうまい”だと、信じて疑いませんでした。

世間でいう“しゅうまい”を見たときは

新しい『しゅうまい』と名のつく食べ物が出てきたと

本気で思っていました」

 

実はしゅうまい揚げは

手で簡単に引っ張れば切れるように入っている

パッケージの小さな切り込みがない。

ひと昔、ふた昔前のそうした商品のように

包丁などでいちいち切れ目を作らないと

開けられないのだ。

消費者の利便性を考えて一般化されている

こうしたものをなぜつけないのか。

そう聞くと、若き専務の目の色が変わった。

 

「変えたくないんです。

味や品質はもちろんですが、

不便だろう、それはもちろん承知の上で

新たに手を加えることをしたくないんです。

昔からある、しゅうまい揚げ。

そのままであることに

こだわりたいんです。

包丁でちょっと切れ目を入れる、その手間。

それも含めて、昔のまま。

しゅうまい揚げは、そうありたいんです」

 

小さなころから積み上げてきた

「しゅうまい揚げ」の玉屋食品の

創業家の人間しか感じ得ない

思いの強さが、そこににじんでいた。

舌に残る記憶だけでない、

その人の人生に寄り添っている

大切な時間の記憶。

 

包丁で切れ目をいれる、その面倒も含めて

“記憶が継続を生む”ともいうような

強い信念のようなものが感じられた一瞬だった。

そして、

そういう気持ちが宿る食べ物は、

気持ちよく、箸を伸ばせると思った。

 

さあ、「しゅうまい揚げ」って一体、何なんだ?

想像と好奇心がどんどんふくらんできたでしょう。

その正体は

5月12日の「けいざいナビ北海道」で。