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2013.11.21
会社魂のたましいvol.29 丸三北栄商会(札幌市)

できれば、舞台のセリフのように読んでください。
「決して、軽い気持ちで食べてはならぬ。
食卓にのぼる前から気持ちを高ぶらせ、
その姿を見て感動をあらわにし、
箸をつける前に日本に生まれたことに感謝して、
他のおかずの味に影響されないよう
食べる順番に気を使い、
神経を舌に集中させ、恭しく、しみじみ、味わうのだ!」
…疲れますね。

ちょっと誇張はしているが、
北海道に来る前、
ウニやイクラ、数の子は、
そう言い聞かせながら、食べる存在だった。
10年以上の道内暮らしを経て
心理的な距離は各段に近づいたものの、
“魚卵への畏敬の念”は
まだ完全には消えてはいない。

松前漬にたっぷり入った数の子。
スーパーで、日常的に買える数の子。
北海道で生活するようになって
うれしいカルチャーショックを与えてくれた。
その立役者ともいえる、丸三北栄商会。
道内の量販店を中心に
数の子や縞ホッケの一夜干しなど、
日本人が愛する海の恵みと食卓をつなぐ役を担う
水産加工会社である。

ただし、その原料のほとんどは
国外の海で獲れたものである。
会議室には、アラスカやカナダ西部の地図が貼ってあり、
斉藤隆夫社長が
それぞれの街の様子を説明してくれた。
何度も足を運び、
現地の空気を肌で知る人でなければできない
生活感のある説明である。

「海外の人は、ニシンの卵は食べないんです。
卵そのものに味はないし、加工に手間がかかるので。
最初、商談に行ったときは変な顔もされましたよ。
なぜニシンの卵が欲しいのか?という感じでした」

昭和30年、
留萌で水産の加工や問屋業を営む会社として創業。
「丸三というのは
3人が力を合わせて創業したことに由来するんです」
という斉藤社長は、若かりし頃、
東京・築地で働いた経験があるという。
「日本の流通の中心地にいるときに
市場から量販店へ、
消費者の購買の軸が移っていくのを目の当たりにしたんです。
そしてその流れは、近いうちに道内にもやってくるというのも
見て取れました」

留萌で創業し、創業時から数の子などを扱っていた
丸三北栄商会も
その流れを組み、量販店へと販売先を移していく。
しかし、そのためには、
価格、品質、仕入れの安定など、
量販店側の要求に応えていく必要がある。
そこから生まれた決断が
海外への入手先の切り替えだった。
豊かな水産資源に恵まれた北海道で、
あえて地元の海ではなく、
海外の原料を求め、買い付ける。
そのノウハウ、経験値を高めるためにやってきたことは、
大いなる挑戦であったことは想像に難くない。

その先にあるのが、
道外からきた消費者が
うれしいカルチャーショックと感じた
「日常の傍らにある数の子」なのだ。

味は、至ってシンプル。
「1年に一度、食べてもらうというものではないですから。
何度も食べたくなる、飽きのこない味にする。
その中で、味の存在感も出したいんです」
味の決め手になるかつお節は
全国各地のものを、
数の子にあうようブレンド。
つまり原料、調味料ともに
「北海道産」ではないのだが、
まぎれもなく北海道の家庭の食卓を飾り、
「北海道はこうだよね~」と
ふとした時に声に出る、食生活を支えている。

もうすぐ師走。
頭の中に、数の子のあの食感が浮かんできた方、
丸三北栄商会の会社魂を
11月24日の「けいざいナビ北海道」で。