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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

俄(にわか)にあらず

テレビの世界に身を置くものとしては
決して褒められた気性ではないのだが、
世の中の流行とかブームとやらに乗っかって
浮かれた気分を表に出すのはあまり好きではない。
今注目を集めていることに興味を示さないとか背を向けるということではなく、
自分自身の中で「これはいい!」と肯定できる
何らかの根拠を見つけられないうちに、
皆と同じことをしたりするのを不安に思うタイプのようである。
ゆえに、常に流行に乗り遅れていて、
もはや乗り遅れているという自覚もない、ほとほと困った奴になっている。

そんな私がさらす、この一枚。

ジャパンジャージ.jpg

今をときめく、ラグビー日本代表のレプリカジャージ。
世界中のラグビーファンから「ブレイブブロサッムズ」と称賛された
桜のエンブレムが目に鮮やか。
ただし、今回、代表選手が着用したものではないのは、すぐにおわかりかと。
相手につかまれにくいように
なめらかで身体に密着する昨今の素材とは対照的な、
丈夫さを第一に考えた、綿が主の分厚い生地。
温かいけど、汗を吸ったら一気に重くなる。
現在のものは襟がないが、
こちらは「ニュージーランド型」とよばれる、
一つボタンの白い襟が付いている。
この襟をわざと立てる着こなしにこだわるプレーヤーもいた。

よく見たら、左袖に
「全日本オフィシャルスポンサー 記念メモリアル版
限定1000着中324番」と記されていた。

ジャージプレミア.jpg

恐らく、協会で個人スポンサー募集を兼ねて販売したものと思われる。
すっかり忘れていた。
記憶が定かではないが、20年近く前に買ったものだ。
しばらく段ボール箱の中に眠っていたが、
この度のイングランドでのジャパンの活躍に
いてもたってもいられず、引っ張り出した。

中学生のころから、ラグビーに魅入られた。
テレビで大学ラグビーが盛んに放送されていた時代で、
慶明戦、早慶戦、早明戦などがその入口だった。
大学時代は、1週間徹夜して早明戦のチケットを手に入れ、
5万人の大観衆の中に身を置いた。
秩父宮ラグビー場にラジカセを持って
実況の練習にも行った。
隣のおじさんに「うるさい!」と一喝され、すぐに片付けたけど。

自分のスポーツ観戦歴において
野球は、スポーツの魅力を知る上での「窓」であり、
スポーツを、世界共通の文化としての価値としてとらえるための
「導き役」だったのが、ラグビーだった。
なぜ、ボールを前に投げてはいけないのか。
なぜ、激しいタックルの応酬の後「ノーサイド」になれるのか。
なぜ、国籍ではなく、所属によって代表選手が選ばれるのか。
それらの背景にある、歴史とか、哲学とか、倫理観とか
少々面倒なルールとともに、様々なことを学んだ。
それらは今の自分の、血になり、肉になった。

就職活動の最中、
「アナウンサーになってやりたいこと」のうち、
ラグビーの実況は、かなり上位に位置づけられていた。
正直、その実現はかなり狭き門ではあったのだが、
社会人2年目に、幸運にも実現した。
天にも昇る気持ちで、中継当日までを過ごしていた。
当時は、トライがまだ4点。
今回のW杯で見たラグビーとはかなり質が違っていた。

その後は仕事として関わることはなくなり、
いちファンとして、ラグビーを見守る立場として過ごした。
心の奥の方に、ラグビーの炎を静かに灯しながら、という感じだった。
愛知県の中学校(当時)の先生に急に頼まれ、
試合前日の選手に「檄」を入れたこともあった。
「No Pain,No Gain」(=痛みを厭うものに前進なし)って
雑誌で仕入れた受け売りの言葉を放ったことを恥ずかしく思い出す。

と、まあ…昔のことを懐かしみ、
思い出話をするだけでは未来への生産性もないので、
今回のW杯で印象に残ったことばをひとつ。
日本代表の帰国時の会見で
エディー・ジョーンズHCが残したキーワード
「マインドセット」=心構えという言葉である。

以下、抜粋。
「日本のラグビーがさらに躍進するために
大きく関わるのはマインドセットだと思います。
これは、私が就任して最初に取り組んだことでもあります。

現在、日本のすべてのチーム、高校からトップリーグまで、
練習している時間はプロと同じです。
ただ、マインドセットがプロではない。
例えば、トレーニングのためにトレーニングをしたり、
ミーティングでその場にいる選手誰もが
『質問されなければいいな』と思っていたりする。

そしてこれらは勝手にそうなったのではなく、これまでの環境です。
日本の大学は心地がいい。
良い選手は良い企業に入れて、
スタメンになって、コーチからも何も言われない。
これでは選手が育たない。

強調したいのは、日本は選手のポテンシャルは高いが、
マインドセットが変わらないといけないということです。
簡単なことではありませんが、マインドセットを変えることはできます。
選手たちを“ベストプレイヤー”にするために、
何が何でもやらなければいけない」

マインドセットという言葉自体は
ビジネスの世界でも使われているもので、
耳にしたことがある方もいるかもしれないが、
こちらは、ラグビーのおかげで、また一つ学びを得た。

あまり強調するのは本意ではないけど、
ラグビー好きは、俄(にわか)ではありません。

いつの日か、また、ラグビーの実況を。
その気持ちも、捨てきれません。

そして、そうマインドセットして生活することも
学生時代の初心に帰るということにつながり
未来に向けて無駄ではないとも思えるので
これからも心に留めていきたいと思います。

ニセ五郎丸.jpg

すいません。ちょっと図に乗ってしまいました。お許しください。