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2015.10.30
縁の下からの向かい風

「もう冬ですよね~この寒さは」
選手ですらそう口にする、
10月も末の宮の森ジャンプ競技場。
とはいえまだ雪が積もっているわけもなく、
アプローチのレーンは人工的に凍らせてあるものの、
ランディングバーンやブレーキングトラックは、
夏仕様の人工芝のままだ。
宮の森②.jpg

「ジャンプシーズン到来!」というには少々違和感はあるが、
10月31日に全日本選手権ノーマルヒルが開催される
宮の森で、懐かしい顔を見かけた。

エプロン姿も愛らしい彼女は
小浅星子さん。

小浅1ショット①-2.jpg

山形県米沢市の出身。
まだ女子のナショナルチームが結成されていない
女子ジャンプの黎明期から競技に取り組み、
大学入学を期に北海道で活動し、長らく第一線で活躍。
155センチの小さな身体ながら、
力強いテイクオフが持ち味で、
国内では上位入賞の常連。
ワールドカップでも10位台の成績を残した。
膝の大けがに苦しんだり、
大学卒業後、様々な職業を経験するなど、
決して平たんな道のりではなかったけど、
「とにかく飛ぶことが好き!」という気持ちにあふれ、
まっすぐに競技に向き合っている印象の選手だった。
2013-14シーズンは開幕からワールドカップメンバーに選ばれ、
成績次第ではソチ五輪出場のチャンスを得たが、
惜しくも夢かなわず、そのシーズン終了とともに現役を引退。
10歳から始めたジャンプに、別れを告げた。

引退後、彼女が選んだセカンドキャリアは
スキーワックスメーカー。
「選手の経験を生かして、
ジャンパーたちをサポートしていきたいんです」
と北海道を離れ、会社のある仙台に渡って2年目。
今回は大会に参加する
女子選手たちのスキーのワクシング担当として
久々に札幌にやってきた。

小浅①.jpg

選手たちと会話する姿は、
現役を離れて日が浅いからこその和やかな雰囲気。

小浅⑨-1.jpg

「営業、広報、いろいろやってますけど、
ワックスはまだまだ見習いです」ということだが、
「スキーがよく滑れば気持ちよく飛べる。
選手のときの気持ちを大事にしながら勉強します」
板に向かっている姿は、
現役のころのまっすぐさそのままだ。

小浅ワクシング②.jpg

どのスポーツでもそうだが、
競技者だった人が現役を去り、
様々な面から競技をサポートする役に回る。
そんな循環が幾重にも重なって、
多くの「縁の下の力持ち」の元選手たちが増えることで
豊かな競技環境が作られていく。
歴史の重みとは、つまりはそういうことだ。
小浅さんのような存在は
まだ歴史の浅い女子ジャンプが
「骨太」になっていく上で、とても貴重なことだと思う。

小浅⑥-1.jpg

「星子」という名前は、
「星を見て心が和む人がいる。小さな輝きでも放って、
周りの人の心を和ませるように」
という願いを込めてお父さんがつけたそうだが、
和ませるだけじゃなく、ジャンパーを助ける「向かい風」を
力強く送ってくれる存在に、これからなっていくだろう。
女子ジャンプ界の「縁の下の力持ち」ならぬ
縁の下からの向かい風」を、これからも吹かせてくださることを
期待いたします。