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2016.1.16
芽吹いて、育って、熟して、そして...

「言葉はいいから、行動で示せ」ともいう。
「言葉が、人を動かす力になる」ともいう。
どちらが正しいのだろう。
行動を伴わない言葉は、飾りにすぎず、
その言葉が勇ましいほど、虚しいもので、
でも、言葉が、くすぶっている心のどこかに火をつけて、
自分でも信じられないような行動力を生み出すことも
間違いなく、人間にはある。
そんな思いが交錯するのもまた、この時期の楽しみだったりする。

1月15日に行われた
ファイターズの2016年チームスローガン発表。
他球団も含めて、この時期の球界の恒例行事ではあるが、
正直例年は、そんなに深くとらえず
発表されてから、「ああ、そうなのか」ぐらいに受け止めているのだが、
今年は、発表の瞬間に、立ち会いたいと思った。
一応、言葉を生業にする者として、
こうしたセレモニーの場に身をおいて、
言葉からくる直感を試したいと思った。

栗山監督が発表した、2016年のチームスローガンは
「爆(は)ぜる」。

爆ぜる②.jpg

 「蓄積してきた自分の力を
余すことなく瞬間、瞬間に全て出し切る」
「結果を出す」=優勝するために必要なイメージとして
「頭じゃなくて身体にすっと入ってきた」(栗山監督)言葉だそうだ。

スポーツチームの1年を表すスローガンには
いくつかのパターンがあるが
「和語」で「動詞」で「シンプル」なのは
好きなパターンだ。
しかも、類義表現がある中で
「あえて」選んだことによる、
「意識の共有」がしやすい感覚がある。

類義語でいうなら
「飛び散る」「跳ねる」「弾ける」「炸裂する」「爆発する」
「ほとばしる」…はちょっと遠いかな。
その中で監督が
「爆ぜる」が最もふさわしいと感じた理由は、
「植物の状態を表現するときに使う言葉だから」と話していた。
球団の発表では、「爆ぜる」の意味を
「栗の実がイガを破って弾け出るように、草木の実などが熟しきって裂ける。
割れて飛び散る」と表現している。
他の辞書などを見てみてみても
「もともと、木の実や豆などが熟して、殻が割れたり、さやが裂けたりする意味で、
その際、実や豆が飛び出すことから、割れて勢いよく飛び出す意に用いる」
とあった。

最下位に沈んだ2013年から再出発し、
世代交代を進めながら
おととし3位、去年2位と順位を上げてきたこの2年を
種を蒔き、水をやり、肥料を与え、
芽を出し、茎が伸び、葉を広げてきた、という
植物の成長と重ねているから。
となれば、次、すなわち今年はどうか。
実をつけ、その実が熟し…そして、爆ぜる。
食物の成長サイクルの、いわばクライマックスのときを迎えるイメージが、
くっきり頭に浮かぶ。

モノではなく、あくまで、命ある植物ととらえることで、
選手もファンも、こころを通わせて、同じ方向へ向かうイメージが持てる。
これはスローガンとしては、とても大事な要素だろう。
だから、他の言葉ではなく「爆ぜる」。

なかなか的を得たいいスローガンだなと思いつつ、
同時に思ったのは、
「日本語って、やっぱり豊かだなあ」ということ。
植物のある状態を指して
「飛び散る」ではなく、
「爆ぜる」という別の言葉が生まれ、受け継がれてきた
日本人の歩みのようなところにまで、
思いが広がった。
その意味でも、何かとしっくりくるスローガンのような気がする。

だからといって
「見事なタイムリー!
大事な勝負どころで、〇〇選手が爆ぜました!」
…なんて、陳腐な実況をしてしまったら
まだまだ「熟してない」証拠。
もっと真摯に日本語に向き合っていかなきゃいけない。
そんなことも考えつつ、
来るべきシーズンに備え
本格的に準備をする時期にきたと実感している。

爆ぜる①.jpg