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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

レジェンドつながり

「安易に、カタカナ言葉を使うな」
若い頃、職業上の戒めとして教育されたため、
こうして文字にするのにも
なんとなく後ろめたさが伴うのだが、
これだけ世間に浸透している、
しかも、敬意の込もった表現なのだから、
許されてもいいかなぁと言い聞かせ、
思いっきり使わせていただきます。
本日のお題は「レジェンド」。

毎年、楽しみにしている会見が
6月28日に行われた。
ファイターズ、というより
最近のプロ野球界の恒例といっていい
「レジェンドシリーズ」のユニホーム発表。
プロ野球を長年楽しむ者としては、
復刻したユニホームを味わうにとどまらず、
当時の選手たちの投げ方、打ち方、走り方はもちろん、
彼らが残した名場面、そのときの仕草や表情、
そして彼らを見ていた当時の自分の状況、
その時の世相や空気まで、
時代そのものを切り取られ、
身体の奥のほうからにじみ出るように浮かんでくる、
独特の快感が味わえる。

去年のこのユニホームが
個人的には一番思い出深いのだが、

去年のレジェンドユニ.jpg

この日発表されたこのデザインもまた奥深い。

レジェンド3ショット.jpg

1974(昭和49)年、
チーム名がそれまでの「フライヤーズ」から
「ファイターズ」に変わった年の、
「日本ハムファイターズ」初代のユニホーム。
球団史上の大きな転換期のデザインだ。
当時は7歳。
正直、野球という存在すら知らず、
リアルタイムの思い出はない。
先の、オレンジと青の帽子の時代にファンとなり、
過去の歴史を学ぶ過程でその存在を知った。
でも「ファイターズ」の歴史において、
自分にとって唯一、
選手たちの動く姿とともに記憶されていないものだからこそ
「レジェンド」という言葉が身に染みる。
何より、大谷、中島卓也という
今が旬の選手が身にまとうことで、
約40年の「時間のズレ」がクローズアップされて
それがまたいい。

レジェンド中島.jpgレジェンド大谷②.jpg

この時代に、このユニホームを着てプレーした
選手たちがいるから、
そして彼らがプレーできる環境を作った
多くの人たちがいるから、
今、こうして北海道にプロ野球がある。
それを実感することで
我々は心おきなく、今を生きることができている。
そう感じることのできる大事な儀式を、
今年も行った気がする。

その日の夜。
試合前のセレモニーに登場したのが、この方。
セギ囲み②.jpg

フェルナンド・セギノールさん。
北海道移転初年の2004年にチームに加わり、
いきなり本塁打王(44本、ダイエー・松中と同数)。
2007年まで計4シーズン4番に座り、
2度のリーグ優勝に大きく貢献。
球団史上最強チームともいわれた時代の主砲。
真面目で温厚、練習熱心、そして明るく、誰からも愛される人柄で
“セギちゃん”の愛称で親しまれた。
移転当時から傍らで取材してきた者には
キラキラした素敵な思い出を
たくさん与えてくれたプレーヤーだ。

セギ雄姿②.jpg

試合前のファーストピッチではサプライズで打席に。
醸し出される迫力は変わらないものがあった

同一球団をずっと取材していると
退団後しばらくたってから見かけても
「過去の人」という感じがあまりしないものだが、
他社の若いアナウンサーに
「どんな選手でした?」と聞かれ、
時間の経過に気づかされてハッとした。
そう、あのキラキラした時間は
もう10年も前のことなのだ。
現在はMLB・カブスのスカウトをしているそうだが、
現役時代と体型もほとんど変わらず、
人懐こい表情で旧交を温めている姿を見ると
現役時代の輝きが逆に鮮明に思い出されて、
こんな言葉が思い浮かぶ。
「あなたも、北海道のファンにとっては
きっとレジェンドですよ」

時間を重ねるたびに新しい物語が生まれ、
その物語を華々しく彩ったものや人が
のちに「レジェンド」と称される。
なんでもレジェンドと呼べばいいものでもないが、
何を、誰をレジェンドとするかは、
社会的な基準があるものでもない。
僕にとって、私にとって
かけがえのないものが、レジェンドになる。

この日、出会った二つのレジェンドは、
幼き頃、純粋に野球を楽しんでいたときのときめきと、
仕事として野球に携わる中で味わった、
かけがえのない貴重な体験を呼び起こす、
性質の違うものではあったが、
どちらも
「野球」というスポーツを追いかけてきた
自分の軌跡の産物という意味で
感慨深いものだった。

これからどれほどの
「レジェンド」を感じることができるのだろう。
そのために大事なことは、
心が震えるために、
感性のアンテナを、これからも研ぎ澄ませていくこと。
それだけは、確かなことだろう。