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2017.5. 9
地に足つける。羽ばたくために。

あんなに雪に覆われていたのがうそのように

心地よい陽気の5月の札幌。

ついこの前まで見慣れていた光景のことなのに、

はるか彼方に行ってしまっていたような錯覚から、

はっと目が覚める。

そうだ、もうたたかいは、始まっている。

雪と氷の王者を決まる、4年に一度のたたかいは。

  

今月9日、

スキージャンプの雪印メグミルクチームが

新シーズンに向けて陸上トレーニング合宿の様子を

報道陣に公開した。

シーズン中はジャンプスーツか

スキーウェア姿を見慣れている選手たち。

軽装で人工芝の上を走る姿が新鮮に映る。

全体写真.jpg

  練習雑感.jpg

トレーニングで見せる身のこなしも新鮮だ。

例えばダッシュ。

フォームのバランス、足の運びの素早さ、

滑らかに前に出ていく膝下などを見ると、

ジャンプに必要な動きってこういうものなのか、

そしてその動きを生み出すための身体を

時間をかけて作ってきたんだ、

ということが伝わってくる。

  ダッシュ①.jpg

「こういう練習だと、

何の競技の選手かわかんないですよね。

カメラさんとかは、飛んでほしいんでしょうねぇ。

飛ばないまでも、せめて、テレマークの練習とか、

『ジャンプ選手だ』ってわかる動きを

してほしいんでしょうねぇ。

しないけど(笑)」

いつものスマイルで語るのは、原田雅彦監督。   

   

原田監督.jpg

「でもこういう、一見ジャンプに関係あるのかわからない

陸上トレーニングでの身体作りが

冬のシーズンに直結してくるんですよ。

例えば、アプローチや空中姿勢のわずかな狂いを見つけて

こんな風に動いたほうがいいという助言は

岡部コーチは、すぐにしてくれます。

でも、その指摘通りに動かせる身体じゃないと、

アドバイスは的確でも、意味がない。

時速90キロのスピードの中で

自分が動かしたいように動かせる身体を作るのが

この時期なんです」

  

「例えば、前のシーズンを

あまり状態がよくないまま終わってしまった選手とかで、

その課題を克服したくて、

早めにジャンプ台に行って飛ぶ、

なんていう過ごし方はあるんですか?」と質問した人に

原田コーチは表情を崩さず、両手でバツを作った。

  

「それはやらないし、やってはいけない。

今のジャンプ台は、サマー使用ができるので

やろうと思えば、1年中飛ぶこともできますけど、

ジャンプの動きをジャンプで修正しようとすると

自分ではなおした動きをしているつもりでも

逆に、よくない動きが残って、しみついてしまうものです。

いったん、全く飛ばない時期を作って

"真っ白な"状態を作らないと、修正はできない。

ジャンプには、『飛ばない時間』が必要なんです」

  

大きく羽ばたくためには、

しっかり地に足をつけて、

翼を動かす身体を作る時間が必要、ということか。

  

チームのキャプテンを任されているのは

最年長、32歳の伊東大貴選手(手前、黒のTシャツ)。   

大貴.jpg

前回、団体銅メダルを獲得したソチに続き

来年の平昌で、

4大会連続のオリンピック出場を目指す。

...いや、出場は目標ではない。

前回以上の結果と、

原田監督からは、

「彼が、日本チームのキーになる選手。

年齢からすればソチが一番いいタイミングだったけど

今回の平昌は

人として、より成長して臨めるオリンピック。

キャリアとしても集大成になるイメージ。

このまま(前回の)団体のメダリストで終わらせず

個人のメダルも狙って欲しい大会」と期待されている。

   

当の本人は

「まわりに振り回されず、

自分をより冷静に見つめながら過ごしていきたいですね。

昨シーズンは焦ってしまっている自分がいた。

正直、『世界との差がかなりあるな』と感じたんですが、

差があるから焦ったんじゃなくて、

どこに差があるのかがつかめなかったから

焦ってしまった。

相手との関係じゃなく、自分が何をすればいいのか。

そう考えて過ごすことで

メダルが近くなると思います」

   

小学生の頃、

地元・下川町の先輩、岡部孝信現コーチ(左)、

そして原田現監督が金メダルを獲得した

長野五輪を見て、本格的にジャンプを始めた伊東選手。

その二人の指導を受ける体制となって迎える

初めてのオリンピックが、平昌となる。

大貴と岡部.jpg

   

偉大な先輩たちとともに歩む

オリンピックシーズン。

心も「地に足をつけて」、羽ばたく時に備えていく。

   

花と緑に包まれた、春真っ只中の一日だったが、

冷気と、心地よい緊張感に包まれた

冬のジャンプ場が思い浮かんだ。