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2019.08.17 放送
特 集2極化する北海道の酪農 メガファーム×放牧

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今週のMCは鈴木ちなみさん。
コメンテーターは北海道大学大学院経済学研究院の平本教授。
今回のテーマは「北海道の酪農」。
北海道の酪農では、大規模・小規模の2極化が進んでいる。







Still0814_00009.jpg十勝の上士幌町にある、農業生産法人 有限会社ドリームヒル。従業員は88人。1,000ヘクタールを超える広大な敷地で、約3,500頭の牛を飼育。年間2万8,000トンの生乳を出荷している。売上高は、北海道で一、二を争う約35億円。全国でも常に3本の指に入るメガファームだ。






Still0814_00006.jpg事務所は牧場というイメージからは遠く、一般企業のオフィスのよう。ずらりと並ぶのは、監視モニター。牧場内に数十台のカメラが設置されているという。牛の体調に異常がないか、24時間体制で監視できるようになっている。ドリームヒルは徹底した機械化による効率化を図ってきた。15年前導入したロータリーパーラーは、当時北海道で初めてのこと。





Still0814_00000.jpg社長の小椋幸男さん。元々家族経営の小規模酪農家だったが、近隣の酪農家と16年前に拡大路線へ。「1番にあがるのは大変だと思うが常にそこを目指していきたい。北海道の酪農を引っ張っていきたい。」と話す。従業員が働きやすい環境作りにも余念がない。敷地入口に立つ5棟の集合住宅、主に外国人用の社員寮だ。中国からの技能実習生で実家も酪農を営むホウ・コクヘイさんは「中国では30歳くらいの女性がもらえる月収は5万円くらい。それでいて激務。この会社は良い会社。部屋は綺麗で広い、家賃は安い、昼ごはん無料」と明るく話してくれた。



Still0814_00015.jpgめざすのは、循環型の酪農。去年完成した、糞尿の発酵時に発生するメタンガスを使ったバイオガス発電施設。電気は売電にまわすほか、使いきれない場合は今後、搾乳機やイチゴの栽培にも使うという。執行役員の畠山尚史さんによると「年間売り上げは約1億円。投資額は7億円」とのこと。さらに大きな投資にも乗り出している。年内に、1,000頭の牛を増やす予定だ。総投資額は30億円を超えるという。





Still0814_00020.jpgこうした規模の拡大を求めて、新天地へ移転した夫婦もいる。宗谷の枝幸町にある、枝幸ヒロヤマファーム。広山さん夫婦が去年、帯広市から移り住み、先月から酪農の再スタートをきった。敷地面積は札幌ドーム22個分にあたる約120ヘクタールで、乳牛250頭を飼っている。辰徳さんは以前住んでいた帯広でも、父の畑作農家の傍らで酪農を営んでいた。





Still0814_00022.jpg帯広では30ヘクタールの敷地で乳牛55頭を飼っていたが、老朽化した牛舎を建て替えようにも数億円の投資に見合った収入が見込めず、悩んでいた。その悩みを聞いて、当時所属していたJA帯広かわにしと、現在所属しているJA南宗谷の双方が移転を後おしした。事業規模は以前の4倍に広がる一方、土地代は帯広の10分の1で済み、その分、牛を増やしたり建物や設備にも投資が可能に。広山さんは「最終的に牛にいい経営をやりたい。それが自分の収入やいい牛乳を搾るということにつながる」と話す。



Still0814_00030.jpgあえて規模の拡大は目指さず、「誰でもできる」を合言葉に牧場を経営する酪農家も。十勝の足寄町で「ありがとう牧場」を営む吉川友二さん。放牧にこだわる酪農家だ。畑には向かない起伏の激しい斜面約80へクタールで、北海道平均の半分にも満たない乳牛60頭ほどを放牧する。農業収入は年間1,500万円ほど。それでも利益率は約40%で、十分儲かっているという。




Still0814_00033.jpgエサ代は1キロあたり10円ほどで、平均的な酪農家の約5分の1。さらに、牛舎も冬や悪天候用に避難できる簡素なビニールハウスがある程度。寒さに強い牛の特性を生かし、設備投資は最小限に抑える。吉川さんの何よりの自慢は牛が長生きすること。「牛は獣医いらずの動物と言われ、15年くらいは生きる。牧酪農家の利益率が高いのは、牛が長生きすることと、エサ代が安いこと」と話す。




Still0814_00039.jpg吉川さんは長野県出身で、北大を卒業後、1994年から4年間ニュージーランドで酪農の技術を学んだ。得意とするのは、「季節分娩」という出産方法。季節分娩では5月~7月に種付けを行い、出産を3~4月に一気にまとめる。牛の数に対してスタッフの割合が少ない大規模経営の場合、人手のかかる出産を1時期にまとめるのは難しい。吉川さんは「牛乳は夏に消費が伸びて冬に消費が減る。私たちの生産は、需要と供給のカーブに合っている」と話す。



Still0814_00043.jpg吉川さんの放牧にほれ込み、近くにチーズ工房を開いた職人もいる。しあわせチーズ工房の本間幸雄さんだ。まだ看板も掲げていない店舗兼工房だが、ネットの記事を見て、すでに客も来ていた。本間さんは「吉川さんのミルクは一年間通しての乳質の差がすごい。はっきり言って作りにくいと感じることもあるが、それが面白さでもある」と話す。





Still0814_00044.jpg吉川さんが足寄町で放牧を始めてから、町内には10軒以上の放牧酪農家が後に続いた。今年も新たに1軒の就農が決まっている。吉川さんは「放牧でできた牛乳だと、スーパーマーケットで分かるような売り方になれば放牧酪農も増える」と話す。吉川さんの理想は、スイスの農園地帯のように、小規模な農家や工房でにぎわうマチだ。





Still0814_00047.jpg効率化で利益を追求する大規模酪農家と、差別化で利益をあげる小規模酪農家。
番組の最後は鈴木ちなみさんの一言コメント。コメントのフルバージョンはYouTubeなどのSNSで公開中。
【取材先】
ドリームヒル、枝幸ヒロヤマファーム、ありがとう牧場、しあわせチーズ工房