tvhテレビ北海道

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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大倉山発 「頂の矜持、すそ野の価値」

あと何回、むずむずするんだろう。

身体の中を巡る、不思議なむずむず。

オリンピックが近づく中、

かつて金メダルを取り、

「日本のお家芸」とも評される種目の実況を前にすると、

度々、そのむずむずが体内を駆け巡る。

 

バンクーバーオリンピック開幕まであと20日に迫った

23日に放送の「第21TVh杯ジャンプ大会」。

オリンピック代表選手たちにとっては

本番へのトライアルという意味がある大会。

代表を争い、そして心ならずも夢破れた者たちにとっては、

勝ち取った者たちを壮行しつつも、

おのれの競技者としての意地を見せる場。

放送に携わるものとして、こうした視点で見てしまいがちだが、

もうひとつの「世界」が、そこにはあると思っている。

 

例えば、彼。

3年ぶりにこの大会に帰ってくる彼は、もともと、

コンバインド=複合で、世界と闘うことを目標にしていた。

しかし、ソルトレイク代表争いの渦中、

国の特定疾患にも指定されている難病の診断を受ける。

持久力が求められるクロスカントリーを伴うコンバインドは

到底続けられない。

そんな現実を前にして、

彼は、コンバインドのもう一つの柱である、

ジャンプを磨くことに、己のアスリート生命をかけた。

転向から1年後の2003年。

14回のTVh杯で、スペシャルジャンプ初優勝。

そこから運命の歯車を回し始めた彼は、

失意のときから4年後の2006年、

トリノオリンピック、ジャンプ日本代表に選出される。

「あきらめない」ことを絵に描いたような、

鮮やかなサクセスストーリー。

 

しかし物語は1年後に急展開する。

2007年3月末。

彼は所属企業から、引退勧告を受ける。

例年なら引退選手の最後のセレモニーの場である

シーズン最後の大会は

その年は天候不良のため中止。

彼は、ひっそりと、スキーを壁に置いた。

 

所属企業の都合という、アスリートにとっては極めて理不尽な、

しかし、日本のスポーツ界では、極めてよくある事情で

競技を去った彼は、

その後、彼に引退を求めた企業を去り、

新たな職場で、家族とともに、暮らしていた。

 

そんな彼は、去年春、現役復帰を決意する。

「32歳の挑戦」と、自ら宣言した。

すでにサマージャンプでは国内トップ選手がフル参戦する中で10位。

シーズン初戦の名寄の大会でも

6位に入賞し、ブランクを感じさせない結果を出している。

しかし、かつての「ジャンプが生活の中心」の立場ではなく、

いち社会人と、競技を、自らの意志で両立させる立場は、変わっていない。

彼、一戸剛にとって、今年のTVh杯は、

今までのものとは明らかに異なる位置づけの、

そして、異なる思いを抱いて臨む大会である。

出場したトリノ五輪にちなんで名づけた、次女・りのちゃんは、

初めて、空を飛ぶ父の姿を

テレビ中継で見るのかも知れない。

 

かつて解説をしていただいた

元・全日本ジャンプチームコーチの竹内元康さんから

こんな話を聞いたことがある。

 

「ジャンプの盛んなフィンランドあたりに行くと、

腹の出たおじさんジャンパーが試合に出てきて

飛ぶ、というか、落ちるようなジャンプをする。

詰め掛けた観衆は、それを見て、喝采を送る。

飛んだおじさんも、見ている人も、みんな笑顔。

そういう光景を見かけるんだ。

その国の、本当のジャンプという競技の『力』を見る思いがする。

トップ選手が強い、というだけじゃ、足りないんだよ。

いろんな立場で競技をやっている人がいて、

そういう選手が出られる大会があって、

そういう選手を受け入れる、環境があることが

本当の『競技力』なんだよね」

 

4年に一度、多くの人の目が集まるオリンピックイヤーだからこそ、

この言葉の意味を考える。

頂上があれば、必ず、すそ野もある。

すそ野が広ければ、山は高くなる。

試合の存在価値や、選手ひとりひとりの、競技に取り組む背景。

その幅が広いほど、その種目は、豊かな環境にある。

同時に、トップにいる選手の責任と使命は、重くなる。

 

さまざまな生き様を抱いた、様々な選手たちが飛ぶ。

「第21TVhジャンプ大会」

「日の丸飛行隊」の歴史を背負って飛ぶ、五輪代表選手たちはもちろん、

そんな選手たちにも思いを広げて、ご覧いただければ幸いです。

https://www.tv-hokkaido.co.jp/special/jump21/

 

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