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2020.3. 3
「今を生きる」あなたへのエール

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で

「人が集う」光景が

どんどん少なくなっています。

   

人が集い、人の持つ力を実感する機会であるスポーツイベントは

特にその影響を受けています。

プロ野球のオープン戦、大相撲春場所は無観客試合。

JリーグやBリーグは延期。

そのほか多くの競技が、中止や延期となっています。

   

シーズン終盤に入ったスキージャンプも同様。

札幌では、伝統の「宮様スキー大会」や、

現役を引退する選手が、仲間たちやファンの前で最後のジャンプを披露する

「伊藤杯シーズンファイナル大倉山大会」など

予定されていたすべての大会が中止となりました。

  

これらの大会で再会できたら

声をかけたいと思っていた選手がいました。

矢部凛香①.jpg

矢部凛香選手、18歳。

岩手・盛岡中央高校3年生。

2月8日に実況した、TVh杯ジャンプに出場した選手の一人です。

同大会は初出場、

そして最後の出場でもありました。

   

小学生のころはアルペンスキーの選手でしたが

中学に入学後、ジャンプに転向したという矢部選手。

      

きっかけは、突然彼女を襲った病でした。

1型糖尿病です。

年齢や生活習慣に関係なく突然発症する

原因も不明なところの多い糖尿病で

彼女は小学5年生のとき、この病に侵されました。

以来、生きるために、毎日複数回

インスリン注射が欠かせない生活を余儀なくされ

それは一生続きます。

   

10歳ぐらいで、この現実を突きつけられたことを想像すると

胸がしめつけられます。

ご家族の心中も、察するに余りあります。

   

幾多の葛藤を経て彼女が選んだのは、スキージャンプという競技。

「刹那」とも表現すべき、ほんの一瞬の動きが求められるこの競技を

「今という一瞬を、懸命に生きる」という

自分の生きざまを表現するために

選んだといいます。

  

大会前日の公式練習の際、矢部選手本人に

翌日の放送でこのエピソードを紹介しても構わないか尋ねると

「ぜひ、お願いします。

同じ病を抱える人の役に立つかも知れないので」

との返事をいただきました。

また、高校3年生なので、卒業後の進路について聞くと

「春からは、管理栄養士になるための学校に行きます。

だからジャンプは、今シーズンいっぱいで引退です。

残りの出場試合、精一杯頑張って

ジャンプを楽しみます」

との答え。

  

健康であることの意味を深く知る歳月を重ねたからこそ選んだ

将来の選択。

そのために、ジャンプに別れを告げることと合わせ

尊い決断だと思いました。

   

彼女が「今を生きる一瞬」を懸命に表現し

空へ飛び出していくその姿を

これらのエピソードとともに

番組では紹介させていただきました。

矢部凛香②.jpg矢部凛香⑤.jpg矢部凛香③.jpg矢部凛香⑦.jpg矢部凛香④.jpg矢部凛香⑥.jpg

解説の原田雅彦さん、山田いずみさんも

「とても立派な志ですね。

ジャンプを通じた経験を

これからの人生に生かして欲しいです」

と、番組内でエールを送っていました。

  

その後、2月25日の全国高校選抜(長野・野沢温泉)

などの大会に出場していたので

3月の北海道での大会にも出てくれるかもしれないと期待し、

またお会いして、ぜひ現場で声をかけたいと思っていました。

   

結局、大会自体が中止となり

それは叶わなくなってしまいました。

何より、彼女の残り少なかった

「大空へ飛び出す体験」の場が

失われてしまったとすれば

そちらのほうが残念です。

  

貴女のことを実況する

最初で最後の機会をいただいたものとして

この場を借りてエールを送ります。

「お疲れ様でした。

"今を生きる"大切さを伝えてくれてありがとう。

大いなる未来が拓けることを祈ります」