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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

レジェンド葛西、語る―48歳、苦難の中の境地

8大会連続冬季五輪出場のギネス記録を持つ

スキージャンプの葛西紀明選手。

異論の余地のないスポーツ界の「レジェンド」は

しかし今、かつてない逆境の中にいる。

昨シーズン、ワールドカップ遠征メンバーで迎えなから

開幕ピリオドでポイントを獲得できず、年明け前に降格となって帰国。

24季連続で出場していたジャンプ週間にも出場できなかった。

開催国枠で出場した札幌でのワールドカップでも、出場55人中最下位で予選落ち。

以降、世界の舞台に返り咲くチャンスがないまま

北京五輪のプレシーズンとなる、今季を迎える。

コロナ禍も重なり、かつてない困難な状況にいる48歳は

どんな心境で今シーズンを迎えようとしているのか。

葛西ブログ用①.jpg      

(11月30日の「5時ナビ」で放送したインタビューを

再構成して掲載します)

   

Q:ワールドカップ開幕を欧州の現地ではなく、日本で迎えるお気持ちは?

葛西:高校2年生、17歳のときから31年間、ずっとW杯の代表メンバーだったので、

メンバーから外れて、そこからどう這い上がるかは、この30年考えたことがありませんでした。

「あっ、大変なんだな」と改めて感じるところもありますけど

落ち込んでもいないですし、不安より「やるぞ」っていう気持ちが今は強いですかね。

「もう上がるしかない」という気持ちです。

   

Q:昨シーズンは極度の不振でした。どう振り返りますか?

葛西:僕の中では4年の周期で、調子のサイクルがあるんです。

こういう(指で円を描いて)円を描いているんです。

(円の)上が絶好調。そこからは誰もが落ちていくんですけど、

落ちかけたところ(円の横)が2年前の平昌五輪で、去年はその下(円の下)で、ちょうどどん底でした。

ここまでいくと諦めもつく。

「こうなったらしょうがない、こういう時期も来る、だから一からやろう」と

アプローチのポジションとか、いろいろ変えながらやってました。

若いときならすごく焦っていたと思うんですけど、

48歳までジャンプやらせてもらってるので、あまり焦らなかったですね。

今はまた少しずつ(円の横のほうに)上がってきたんです。

ということは、ここ(横)からここ(上)に上がるしかない。

2022年の北京五輪は、この調子の円がちょうど合うんじゃないかという期待が、すごく強くなってます。

葛西ブログ用③.jpg 

 

Q:自分の中では想定外の不振ではなかった?

「想定外」ではなかったですが、周囲が以前とは変わってます。

全体のレベルが上がってきているのは、すごく感じます。

日本チームの若い選手も強くなってきているし、

世界でも、どの国にも強い選手が出てきて、簡単にはW杯でポイントは取れない。

国内の大会でも、ちょっと失敗したり風が当たらないと、

今まで自分より下と思っていた若い選手にすぐひっくり返されるようになっている。

その中で戦うには、相当自分が調子を上げないとダメだという危機感は、

ここ数年は結構感じてやってますね。

   

Q:9大会連続出場がかかる北京五輪まで、もう1年ちょっとです。

葛西:今季中にW杯のメンバーに再昇格すれば、五輪の代表選考は見えてくると思うんですけど、

その道のりはなかなか厳しいと思います。

まず国内の開幕戦である名寄での2戦で、ダントツで勝つ。

そこからW杯の一つ下の、コンチネンタルカップのメンバーに選ばれて、

海外に遠征して、そこでも成績を出さなきゃ、W杯に上がれない。そんな状況です。

今、W杯に行っている日本の6人の成績とかとの関係もありますけど、

そういう「すき間」はあるんじゃないかと思ってます。

そしてその「すき間」に、どこかですっと入っていかないと、北京は厳しいと思います。

葛西インタHP用追加①.jpg

   

Q:その「すき間」に入るために必要なものは、何だと思いますか?

葛西:プラスアルファはそんなに必要ないと思ってます。

何かを変える、新しくするのではなく、ジャンプで一番大事なポイントさえおさえれば、

また自分の調子も上がると思ってます。

絶好調だったソチ五輪のシーズン(2013-14)と、トレーニングはそんなに変えていません。

そしてそのトレーニングをやっている小林陵侑が、(2季前に日本勢初のW杯総合優勝と)世界を獲った。

今は陵侑を目標にやれているんです。

彼を教えながら、「だから、自分にもできる」と自分に言い聞かせて

陵侑に教えたことを僕ができるようになれば、

世界で戦えるっていう手応えをつかみつつあるんです。

自分のチームに世界チャンピオンがいてよかったと思いますし、

そこまで育てられて、監督としてもうれしいですね。

ただ強すぎて腹が立つというのもありますけど(笑)。「あんまり教えすぎたかな」と。

体力も筋力もまだまだ衰えてませんし、気持ちだって、やっぱり負けると悔しい。

そういう気持ちが持てるっていうことは、「まだ俺はやれるぞ」って思ってます。

   

Q:状況を考えると、1試合1試合の重みが非常に増すシーズンかと思います。

葛西:必ず勝たなきゃいけないという状況だと思いますけど、

そんなに硬くならずに、意気込まずにやっていこうと思ってます。

今まで、焦って、空回りして、ダメだっていうことを何度も経験してますから。

勝たなきゃいけないのはわかっているけど、

しっかり心に余裕を持ちながら、勝つところはしっかりつめて勝つ、

という戦い方をしていきたいですね。

48歳ですからね。僕のすぐ下は、日本では伊東大貴が34歳。

大貴でさえ、僕とは14年空いている。

後輩たちにはない力を僕は持っていると思うので、それを生かせたらなと思ってます。

    

Q:ただでさえ厳しいシーズンを、コロナ禍という未曽有の状況の中で過ごします。

葛西:全世界のアスリートが、このコロナで苦戦していると思います。

みんな初めての経験だし。だいたい、焦ると思うんですよ。

どうしたらいいかわからない不安と、迷いと、焦りに襲われるはずです。

そういうのを考えると、頭の中が疲れる。

僕はそういうのを察知するのがすごく早くて、

自分で「あっ、疲れるな」と思ったら、なるべく疲れない方向に持っていくことを心掛けてます。

運命に任せるというか、「なるようにしかならない」という心境です。

これから先も情勢はどうなるかわかりませんが、「どうしよう」っていう気持ちはないです。

この先、運が巡ってくるかもしれないし、こないかもしれない。

これは本当に、任せるしかないと思ってやっています。

レジェンドインタ③.jpg

   

Q:シーズン開幕戦は目前です。

葛西:去年より、本当に調子はいいんです。

10月末から11月初旬の札幌でのサマー大会5連戦は、五、六割ぐらいの状態で臨んで

コンスタントに10位以内に入った。

ということはここから(入賞の)6位以内、3位以内で表彰台、

そしてその上に...というふうになると思ってます。

まずは12月12、13日の名寄での国内大会、48歳でもまだまだできるぞ、勝てるぞ、というところを

見せていきたいと思っているので、皆さんにはそこを見てほしいなと思います。

   

最も印象に残ったのが、この言葉。

葛西紀明という選手を象徴する、最も葛西らしい、そして、常人にはなかなか言えない境地だ。

   

「常にポジティブ。ネガティブシンキングは、1ミリもないです。」

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不屈の闘争心で挑み続ける男、葛西紀明は

自らのレジェンドストーリーに、何をつづるのか。

寒くて熱い、冬の到来だ。

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