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2010.11.24
小春日和の土曜日に

ファイターズの新入団選手発表会見に行ってきた。

希望に満ちた未来だけが広がっている時間と空間。

人間の一生の中でそうあるものではないそんな

時間と空間に身を委ねるのは、たとえそれが他人のものであっても、

心地悪いはずがない。

 

斎藤佑樹はいなくても

若いエネルギーに満ちた会場の傍らに、

いつもと同じ穏やかな笑みをたたえる

ロマンスグレーの紳士がいた。

 

山田正雄ゼネラルマネージャー。

選手編成の責任者である。

オリオンズで11年プレーし、引退後はサラリーマンに。

身体を壊す寸前まで猛烈に働き、

その後、ファイターズのスカウトに転じて多くの選手を発掘。

ダルビッシュ、中田翔の獲得の際のスカウト部門の責任者だった。

3年前から、北の常勝軍団を支える

背骨のような重責を担っている。

 

その山田GMも臨席したドラフト。

斎藤佑樹の交渉権獲得の興奮と喧騒冷めやらぬ中、

2位指名した選手は、まだあどけない顔立ちの高校生である。

智弁和歌山高校出身、西川遥輝選手。

1年生の春に名門のレギュラーとなり、甲子園に4度出場。

柔らかさと鋭さを兼ね備えたバッティングと

「盗塁王のタイトルを獲りたい」と語る

スピードが売り物の外野手である

…と思っていたら、入団発表の場で

「ファイターズでは、内野手に挑戦します」とのアナウンス。

ちょっとしたサプライズであった。

 

会見後、山田GMと、このことについて話をした。

「内野手としての適性というのを、ずっと考えながら見てきた選手。

ショートとして育ってくれれば、という期待を持ってます」という。

その山田GMが、

以前、こんな話もしてくれたのを思い出した。

「ショートというのは、いろいろな“気配り”が必要なポジション。

チームの守備全体を束ねるような役割を持っているから、

周りを見る力とか、先回りして対応する感覚のようなものがないと、

一流のショートにはなれない。

身体能力の高さだけではダメなんです。

そういう、“表に現れにくい才能”を見つけるのが、難しいところなんですよね」

 

「以前伺った話からすると、

彼にそうした“気配り”というか、“表に現れにくい才能”を感じた、ということですよね」

「そうだね」とうなずきながら、話を続けてくれた。

 

「最近は、アマチュアの強豪チームと言われているところでも、

いや、我々と同じ、プロのチームでも、

『技術』だけを考える指導者や選手が多い。

でも、ファイターズが求めているのは

技術だけじゃなくて『野球』を身につけている選手なんです。

彼には、そういうものを感じる」

 

どう投げるか、どう打つか、どう走るか、

野球というスポーツは、そうした技術を使う時間はとても短く、

身体を動かしていない時間のほうが圧倒的に長い。

ボールが動いていないとき、何を考え、どういう行動がとれるか。

時間は全ての人に平等なのだから、

そこの使い方で、成長の度合いに変化が生まれる。

 

高校2年の春以来の内野手に挑む西川選手は

「内野をやれることはうれしい。相当練習しなくちゃ、とは思いますけど」

と屈託なく笑っていた。

色白で細身の18歳の奥に、どんな“野球力”が秘められているのか。

その力を、札幌ドームで発揮するのは、いつの日なのか。

見えにくいものだけど、探し出してみたいから、

早く1軍に上がってきてね、と心の中でつぶやいた。

 

それにしても、改めて思う。

“周りを見る目、先回りする気配り、表に現れにくい力”

いつまでたっても、身につかないものだけど、

いくつになっても欲しいもの、だなあ。

若者たちの旅立ちの日に、人生を考えさせられた

ひとときだった。