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2016.6.23
葉は初夏に伸びる

肌寒さのあまり思わず手をこすった
3日前と同じ場所なのか?と思えるほど
この時期の札幌らしい、初夏の陽光が降り注いだ
宮の森ジャンプ競技場。
そんな天気に相応しい笑顔を時折弾けさせる
「女王」がそこにいた。

6月19日、
女子ジャンプ・高梨沙羅選手が
2季ぶりにW杯総合優勝を奪還した
2015-16シーズン終了以降初めて
札幌での練習を公開した。

沙羅①.jpg

5月の連休明けから既に本格的にトレーニングを再開。
「助走速度が出ない小さな台で
しっかり足で滑って立つ動きをつかむ。
毎年やっているやり方です」と
ミディアムヒルの台での練習を重ね
前日からノーマルヒルで飛び始めた。
昨シーズンの後半からできてきた感覚があるという
「しっかりした接地からゲートを離れる」
アプローチの組み方が当面のテーマ。
「自分の踏み方が見えてきたという感覚はあるけど、
やらなきゃいけないことは山積みです」

沙羅助走.jpg

昨シーズン、W杯17戦14勝を挙げ、
他国のライバルも「彼女はサイボーグ」と脱帽する
異次元の強さを見せる絶対女王ながら
驕りの欠片も感じさせないコメント。
中学生の頃から日本のトップに君臨し、
その頃からコメントのスタンスが変わらない。
「中学生がこんなに老成したコメントをしていて大丈夫か」
と当時は正直心配な気持ちを抱いたこともあったが、
最近は勝手ながら「安心感」を覚える。
このブレのなさが、彼女の本質で、
競技者としても人間としても
経験を積んできたことで
そうした本質に対する、自分自身の確信が高まっているような
印象を受ける。
もちろん、それ自体が常人ばなれしたものなのだが。

この日は父の日。
絶対的な信頼のもと、指導を受ける
父、寛也さんへのプレゼントについて聞かれ、
「桜餅です。甘いものをつまみにお酒を飲むのが好きなので」
と答えたときの笑顔は、ありのままの19歳で、
このほぐれ方もまた、いつもと変わらない。

沙羅笑顔2016.jpg

「ジャンプは環境に適応する競技。
台の特徴や自然条件、
刻々と変わる状況に合わせて
コンマ何秒のレベルで、
ベストな技術を選択できるかを競っている。
だから、頭の中にたくさんの引出しを持ち、
柔軟な思考と、適切な判断を行動に移せる選手が、
結果を出すんです」
そう言ったのは、原田雅彦さん。

沙羅ジャンプ.jpg

極限の集中力が問われる場において、
そうした柔軟な思考や、適切な判断を生み出すのは
実は「ブレない心」だと思う。
しっかり大地に根を張っているから
どんな方向から突風が吹いても、吹き飛ばされない、
彼女には、そんな植物のイメージがある。
来年2月の、世界選手権(フィンランド)、
そして2018年の、平昌五輪。
未だメダルを手にしていない両大会で
至上の輝きを放つ大輪の花を咲かすべく、
その葉は、のびのびと育っていることが伝わる
初夏の陽光の宮の森。
7か月後には、銀世界に染まった同じ場所で、
それは証明されることになるだろう。