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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

BOX~"魂の箱"が開いた夜

夜10時前に届いたメール。

前職の局の先輩アナウンサーからだった。

目に飛び込んだその文字に

かっと身体の奥底が熱くなった。

「緑ジムから戸高以来の世界チャンピオン誕生」。

  

9月22日、京都市体育館で行われた

ボクシング・WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ。

8連続防衛中の寺地拳四朗(29=BMB)を

10回TKOで降し新王者となったのは

挑戦者、矢吹正道(29=緑)。

4年4か月にわたって王座防衛を続ける寺地を

戦前の不利の予想を覆して矢吹が破っての王座交代。

試合については書き出すときりがないので一言、

「魂の激闘」だった。

ベルト掲げる矢吹.jpg

16戦13勝3敗(12KO)のハードパンチャー。

ボクシングスタイルももちろんですが

すでに多くの記事で紹介されているように

「生き様」も魅力的な新王者。

 勝利直後3ショット.jpg 

セコンド陣。

左は矢吹選手の実弟で現在日本ライト級6位の力石政法選手。

中央は加藤博昭トレーナー。名古屋時代、たくさん取材でお世話になった名伯楽です。

ベルトと認定証.jpg

世界王者の認定証とWBCのチャンピオンベルト。

WBAの黒いベルトも渋くていいけど、この緑のベルトもファンにはたまらない。

  

矢吹選手が所属する名古屋の緑ジムは

20代後半から約7年、足繫く通った。

東海道の宿場町、「有松絞り」で名高い

情緒あふれる古い町並みを抜けてジムが近づくと

毎回気分が高揚したのを思い出す。

一夜明け会見時.jpg

緑ジムで翌日行われた会見時の画像。

後ろの壁が自分が取材していたころと全く変わっていない。

松尾会長(右)の慈愛に満ちた表情に心打たれる。

       

もちろん選手としてではなく、

中継のための取材で、である。

子どものころから大好きなボクシングという競技を

幸運にも担当させてもらい、

さらに幸運にも

二人の世界王者が誕生する瞬間に携わり

うち一人は、実況席でその瞬間を言葉にすることができた。

目にも止まらぬ速さで、人生を変えてしまうパンチが交錯する攻防を

一撃たりとも見逃さず追いかけて言葉にする。

圧倒的な緊張感を強いられるが

それゆえ学びも多く、達成感の大きいこの競技の実況を

アナウンサーとしての土台を固める時期に

浴びるように経験できたことは

本当に幸運以外の言葉が見つからない。

  

そして最大の幸運は

緑ジムがその経験を積む場であったこと。

これは断言できる。

ボクシングへの、選手への情熱と愛情にあふれ、

ときに選手を守るために危険を顧みない胆力を持ち

我々取材者にも誠実に向き合ってくれた

松尾敏郎会長を筆頭に

多くの素敵なスタッフの方々と過ごした時間は

何者にも代えがたい

間違いなく一生の宝物だ。

名古屋を離れてもう20年近く経つが

その記憶は色あせることがない。

↓過去に緑ジムやボクシング関連で書いたブログ

https://www.tv-hokkaido.co.jp/announcer/daito/2017/03/post-165.html

https://www.tv-hokkaido.co.jp/announcer/daito/2015/02/post-80.html

https://www.tv-hokkaido.co.jp/announcer/daito/2017/11/post-184.html

  

だから、先輩から届いたメールに

熱くこみあげるものが止まらなかった。

自分は住むところも変わり、

仕事としてボクシングに関わらなくなって久しい。

残念ながら「遠くにいってしまった」側の人間だ。

でも会長はじめ、ジムの皆さんは

何も変わらず、最前線で戦い続けていた。

平坦ではないことが容易に想像できる険しい道を

心の中の炎(ほむら)を絶やすことなく進んでいた。

そして18年の歳月を経て

(二人目の世界王者・戸高秀樹が2階級制覇となる

WBAバンタム級暫定王者となったのは2003年10月4日)

その歩みは報われたのだ。

彼らの過ごした歳月の長さと密度の濃さに思いを広げたとき

その夜は、特別に素敵な夜となった。

  

ボクシング(BOXING)の語源は

握り締めた拳が「箱=BOX」の形をしていることに由来する。

相手を殴り倒すために作られた

ごつごつした箱の中には

ボクサーと、彼を取り巻く人たちの

人生が詰まっていている。

そんな箱の中身の重さが、わずかな勝敗の差を生むこともある。

それが、ボクシングだ。

  

矢吹選手のボクサーとしての純度や人間としての厚み、

さらには彼を支える、松尾会長をはじめとする

緑ジムの方々の情熱と、心のつながりの深さ。

そうしたもの全てが詰まった「箱」から繰り出された

パンチによって成し遂げられた戴冠劇。

ボクシングというスポーツにしか綴れない物語だ。

  

そして、大切なことを思い出した。

拳を通じて、たくさんの人とのつながりを感じる。

ボクシングと出会ったことに幸福を感じられる。

そんなかけがえのないものも

あの箱の中には詰まっている。

  

松尾会長、緑ジムの皆さん、

そして、お会いしたことはありませんが

矢吹正道選手。

新王者、おめでとうございます。

  

ストレートすぎる芸のない締めくくりでした。


試合後GS.jpg  

※この度は前職時代から交流のある

緑ジム・村上学マネージャー(右)より画像の提供していただきました。

マッチョトレーナー、大変感謝申し上げます。

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