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2014.8.28
夏の思い出~あるバスケチームに捧ぐ

まだカレンダーは8月。
でも札幌に吹く風は、もう秋のものだ。
暑かった夏、と書くのは、私のような、ふつうの大人たち。
熱かった夏、と書くのは、その夏にしか経験できない
特別な時間を過ごした若者たち。
そんな特別な時間を、ちょっとだけ覗かせてもらったのが
今月初め。

今年で5年連続となる
「北海道中学校バスケットボール大会」の取材・実況。
今年の会場は、真夏日の旭川だった。

毎年、中学生たちの「今を生きる」姿に
たくさんのエネルギーをもらっているが、
今年は特に印象に残るチームがあった。

斜里町立斜里中学校バスケットボール部。
3年生6人、2年生4人、1年生1人の総勢11人。
そのうち、2人が中学に入ってからバスケを始めた。
コートに立ってプレーする事実上の戦力は限られる中
オホーツク管内予選を初めて制し、
全道大会初出場で決勝に進出。
初めて、全国大会出場を果たした。

小学生時代、ミニバスの全道大会で優勝したメンバーが
ほぼそのまま中学に上がって3年目。
とはいえ、小学時代の実績だけで勝ち抜けるほど
全道は甘くはない。
限られた戦力と環境の中でいかに力をつけ、
激戦を勝ち抜くか。
今大会は、彼らが斜里の街で積み上げてきたものの
集大成だった。

準決勝で最大のライバル校を1点差で降し、
全国大会出場を決めた直後、
号泣していた須藤一雅監督。
同校の数学の先生として赴任して4年目。
主力選手たちである3年生の担任でもあり
コート外でも、彼らと息づかいをともにしながら
この悲願を達成した。
「地域の皆さんの協力があったから…」
といったまま絶句して泣きじゃくる姿には
こちらも胸が熱くなった。

試合後、監督が素敵なエピソードを話してくれた。
「今の3年生が入学したとき、
『僕たちが須藤先生を全国に連れて行きます』と言われたんです。
その言葉を聞いて僕が言ったのは
『自分たちからした約束は守ろうな』でした。
次に、約束を守るために大事なこととして確認したのは
『うまい奴が偉いと思っていたら勝てない』でした。
バスケの能力には差はあっても、
それぞれに大事な役割がある。
その役割を全員がすこしでもおろそかにしたら
全国には行けない。
つまり、約束は守れないことになるよな、と話をしました。

ミニバスで優勝した子たちと、そうでない子たち。
少ない部員でありながら
試合に出られる選手と、出られない選手がはっきりしている。
その現実をどう消化し、
自分たちの力に変えていくかを考えました。

クラスの担任もしているから
普段の彼らも見ているんですが、
この約束のもとで
ひとりひとりの視野が広がってきて、
お互いを知ったり、認める姿勢が
深まっていくのを感じるのがうれしかったですね」

「おかげで、ベンチの選手も含めて、
一人でも乗れば、一気にチームが勢いづくし、
一人でも崩れると一気に崩れちゃう、
いい意味でも悪い意味でも
チームのまとまりが
コート上のパフォーマンスに直結するのが特徴なんですけど」
と評した須藤監督。
最後まで、チームのまとまりを
高いレベルで保ち、
全国への切符を手に入れた。
激闘の裏にある、
積み重ねた、時間の濃密さが伝わってきた。

11人が臨んだ全国大会は
先週、香川県で行われ、
リーグ戦2戦全敗で終わり、
彼らの「約束の旅」は幕を下ろした。

大会後、改めて須藤監督に話を聞いた。
「ベンチに空席がある(大会のベンチ入りは15人)のは
うちぐらい。
改めて、恵まれているとはいえない環境で
やってきたんだなあと感じましたけど、
だからこそ、見返してやると思いましたし、
こいつらならやってくれるとも思ってました。
やってみて、通用するところもたくさんあったし、
勝たせてやれなかったことについて
もっと僕自身にできることがあったのではないか、
指導者として悔いが残る大会でもありました。
あいつらは、僕との約束を守ってくれた。
夢の続きを見せるのは、僕の番だと思っていましたから。
3年生たちは大会が終わって、引退が決まった瞬間、
『(高校に行って)また、ここ(全国)に来たい』って言ってました。
次の新しい夢を持ってくれたことが
最大の収穫だったと思います」

バスケットボールにまつわる格言を調べたら
こんな言葉に出逢った

“TEAM(チーム)に、I(=自分)というスペルはない”

彼らが過ごした時間は、この言葉そのものだったのかも知れない。

暑いだけだったおじさんに
熱い夏を届けてくれてありがとう。
本格的な秋になる前に
伝えたかった出来事です。