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2015.4.30
季節外れの「晴れた日の雪原を渡る風」

ここ数日の札幌は
春を飛び越え、初夏がいきなりやってきたような陽気。
ついこの前までは、雪を踏みしめながら歩いていたのに。
こんな心地よい暖かさに包まれていると
風雪に晒される中取材した
大倉山ジャンプ競技場や白旗山距離競技場での
あのときを懐かしく思い出す…
わけではないのですが、
3か月前に放送した
「FISワールドカップ ノルディックコンバインド札幌大会」。
とても大切な時間として心に刻まれています。

この大会に出場した 
加藤大平選手(サッポロノルディックスキークラブ・和寒町出身)と
競技委員長を務めつつスタジオの解説もしていただいた
阿部雅司さん(東京美装・小平町出身)のお二方と
先日、お会いする機会がありました。

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1994年、リレハンメル五輪団体金の阿部さんと
2009年、世界選手権団体金の加藤選手という
ダブル金メダリストと、贅沢な時間を過ごすことができました。

ジャンプとクロスカントリーという、
全く性質の違う種目で
雪原の王者を競う過酷な競技・ノルディックコンバインド。
時に理不尽な自然のいたずらとも向き合わなければならない
この競技で、
長年日本をけん引する加藤選手の言葉が
印象に残っています。

「僕は、コンバインドをやっていなかったら、
もう今は現役はやっていなかったんじゃないかと思うんです。
コンバインドって、やることがいっぱいあるんですよ。
当たり前ですけど、ジャンプと、クロスカントリーと両方やるから。
例えばジャンプだけだったら、
1日の中でジャンプ競技に必要なことって、限られますよね。
コンバインドをやっていると、それをやった上で、
クロスカントリーのために必要なことをする。
その時間の使い方があるからこそ、
まだ僕は現役でいられるような気がするんです。
どちらかだけしかやっていなかったら…
時間が間延びするというか、緊張感が保てないというか、
そんな感じになって、競技への情熱が冷めてしまったんじゃないかと
思うんです」

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「アスリートって基本的に負けず嫌いの塊ですから、
負けは簡単に認めたくない。
その気持ちがあるから、次の試合に向かう闘争心が湧く。
ジャンプで、もうひと伸びがなかったときに
『風がもう少しよければ』ってよく言う人がいるのも、
その気持ちの表れの一つではあると思うんですけど、
でも、本当に強い選手は、
『風のせいだ』って言わないです。
それは、“言い訳したくない”とかっていう、
精神的な理由とも違うと思います。
風が不利な状態でも、こうすれば距離を伸ばせるという、
技術的な根拠が、その人にはあるんです。
自分の中で解決できる課題なんです。
だから『いい風が来ていたら』なんていう
自分の力ではどうすることもできない
仮定の話をする必要も、悔しがる理由でもない。
そう僕は思います」

僕はジャンプが得意で、
今ならワールドカップのどの試合でも、
普通に飛べばトップ10以内に入る自信があります。
でも、そこから上の、トップ3とかトップに立つとなると、
風の力を借りないと厳しい、と感じています。
だから、そんないい順位になったら
『いい風もらいました』って言うと思います。
逆の意味で『風のせい』っていうことですから。

『風のせい』とか『もう少し風をもらえれば』って
よく言っていた選手が、最近言わなくなったなと感じたら、
その選手が技術的に進歩した、
って考えていいんじゃないですかね」

現役選手から、取材する際のヒントまでいただき、
楽しい時間はあっと言う間に過ぎてしまいました。

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浮かれてしまい自分のほうがよくしゃべってしまって、
もっと深い話を伺うチャンスを逸してしまったと、
自戒もしておりますが。

発祥の地にして本場である欧州では、
コンバインド選手は
「冬空を舞う鳥のように翔び、雪原を駆ける鹿のように走る」
と表現されるそうですが、
お二方とも、世界の頂点に立ったことがありながら、
「晴れた日の雪原を渡る、心地よい風のような」
謙虚で柔らかな人柄。
ますますこの競技が好きになりました。

昨年のソチ五輪で、20年ぶりにメダルを獲得した
日本のコンバインド。
2018年の平昌で更なる躍進を祈りつつ、
冬のスポーツに携わる人たちを
きちんと見つめていく
北海道の放送局のアナウンサーとしての責任を
これからも怠りなく果たしていかなければと、
初夏のような陽気の中で、最確認しました。
加藤選手、阿部さん、
貴重な時間をありがとうございました。