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2016.11.20
We will survive

夢や感動を覚え、与えてくれるものそばには、
往々にして、それとは対照的な、
暗くて深い穴が横たわっている。
光と影と表現してもいいその両者は
双方が相まることでまた、人々の目を、心を惹き付ける。

例えば、この秋に始まった
バスケットボールの新リーグ・Bリーグ。
NBLとbjリーグ、二つのリーグが存在する
いびつな状態だった日本のバスケット界を「正常化」する形で
新たに始まったトップリーグは、
その目的を果たすために、
健全な独立採算運営を各クラブに求め、
年間順位による1部、2部の入れ替えも行われる。
適切な経営と、試合で結果を出すことの、
二つのマネジメントを両立させる、
真の「プロフェッショナル」な
クラブと選手たちによって行われことを目指して始まった。

それは、シビアな生存競争の場と同義でもある。
強くて魅力的なクラブを作るには、相応の資金が必要だが、
プロである以上、それは自ら創り出さねばならない。
できなければ、身の丈にあった運営をしつつ、
ファンや来場者の心が離れないような、
試合という良質な「商品」を提供しなければならない。
安定した経営と、試合という「商品」の両立するのは、
そうそう容易なことではない。

そのリーグに身を投じている、
レバンガ北海道も、難題に直面している。
12人の選手を登録できるリーグでありながら、
10人にとどめて開幕を迎えようとしたその矢先に、
骨折で一人が離脱。

牧全リハビリ.jpg
アメリカの大学から凱旋してプロ2年目の牧全が左手首骨折。
「若手有望株」といわれていた期待の選手の離脱は痛かった。
なんとか年内の復帰を目指す。

さらに、開幕後に2人が次々と負傷。
西川治療中.jpg

日本代表も経験、得点源としてエース級の活躍が期待された西川は
右太ももを痛め離脱中。

試合に出られる選手は、一時、7人となった。
交代が自由にできるバスケットボールでは、
ベンチにいる選手も含めた、総合力がものを言うのが常道。
「7」という数字は、相当に厳しく、
この間の成績は、8試合で1勝7敗。

練習その①.jpg

アマチュアの選手の協力を得て、実戦形式の練習にこぎつけることもある。

今月に入って、旧bjリーグでプレー経験のある
貝沼雄介をアマチュア契約で獲得。
貝沼.jpg

亡くなったお父さんの年齢「42」を番号に選んだ貝沼。
彼にとってはプロとして生きる、千載一遇のチャンスの場である

更に、負傷した外国籍選手との契約解除に踏み切り、
2シーズン在籍した、ジャマール・ソープと再契約。
昨季終了後、再契約には至らなかったが、
緊急補強として呼び戻した形となった。

ソープ入団②.jpgソープ入団①.jpg

清永統括(右)、水野宏太HC(左)と入団会見

もともと昨季、アグレッシブかつ献身的なプレーで
初のプレーオフ進出に貢献したソープは
シーズン途中の「助っ人」としてはうってつけ。
加入直後から「ずっと前からいる雰囲気」を醸し出し、
チームにフィットしている。

ソープ&水野.jpg

練習後、英語が堪能な水野HCと2人で談笑するソープは
チームメイトも「ロッカールームがにぎやかになった」と口をそろえる明るいキャラクター

今月17日の入団会見のあと、
交渉にあたった清永チーム統括兼通訳に話を聞くと、
「昨季まで在籍してすぐにチームになじめるから、
彼を最優先したわけではなく、
獲得リストに上がった選手は彼(ソープ)以外にも数人いて、
結果として、彼と契約がまとまったということです。
実質的には1~2週間のスピード交渉。
これが世界のバスケットマーケットです」
と振り返る。

「チームの浮沈に大きく影響する外国籍選手を
適切な判断で替えることができたのでは?」と聞くと
清永統括は、いつものクールな口調で答える。
「このタイミングで外国籍選手を入れ替えたのは、
我々だけじゃないんです。
我々より現在の順位が上で、戦力的にも整っているはずの
複数のチームが替えてます。
しかも我々のように、ケガでプレーできないから、とかの理由ではなく、
開幕からコンスタントにプレーして、
チームトップクラスのスタッツ(成績)も残している選手を
替えているチームもある。
外国籍選手がこんなに短いスパンでこれだけ変わるのは
昨季まで我々が所属していたNBLでは、なかったことです」

その理由を、彼はこう分析する。
「我々だけでなく、どのチームも、怖いんだと思います。
新しいリーグになって、
今までの経験や見込みが通用しなくて、手さぐりのところも多い。
始まったばかりの今の対戦成績は、あてにならない。
このあと急速に順位が入れ替わる。
その可能性をどのチームも感じています。
Bリーグには入れ替え戦があります。
NBLにもbjにもなかった『降格するかも知れない』怖さが、
今、結果が出ているチームにも、じわじわ湧いてきている。
『一刻も早くこの怖さから脱け出すために、打てる手は打とう』
という気持ちが、この動きを生んでいると感じます。
だから我々も、ソープが来てくれて
『さあ巻き返すぞ』と、安易には考えられない。
他のチームも、必死で手を打っている。
出来る範囲でということではあるけど、
最後まで、いろいろやっていかないと」

練習その②.jpg

新リーグの「光」の部分の裏にある、
冷徹で、厳しい現実を見た気がした。
同時に、この生々しさ、スリルこそが、
新リーグの魅力を増幅させている要素でもある。

ソープが加わり、現在9人で戦うレバンガは、
今月19、20日に行われた
リーグ屈指の潤沢な資金と戦力を誇る
アルバルク東京戦に連敗。
4連敗、通算4勝12敗と苦境は続く。
怖さと隣り合わせの戦いは、まだまだ続く。

怖さを受け入れ、乗り越える。
少なくとも、その意志を行動を示し続ける。
それが、プロフェッショナルの宿命。
チームの、選手の、その姿から目をそらさないことが
見る側、支える側がプロフェッショナルになっていくための宿命。
新たな理想を掲げるリーグに身を置くということは、そういうこと。
俺たちは、生き残る―。
それが今の、合言葉なのかも。

最後のあいさつ.jpg