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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

暑い夏、熱きバスケットボールの夏

 

朝起きて、洗面所で顔を洗いながら、背中がじっとり汗ばんでいるのを感じる。

札幌生活8年目で初めてぐらいの、久しぶりの経験。

かつて住んでいた名古屋では、普通のことだったので

驚きはしないが、爽快な気分ではない。

口に出しても変わるものではないが、今年の夏はうっとおしいくらい暑い。

ただ、この季節にコートに響きわたる若者たちの声は

不思議とうっとおしくない。

むしろ何もしないと苛立ってくる暑さから気持ちをそらしてくれる。

名古屋時代以来久しぶりに、中学生たちの真剣勝負をしゃべった。(そのときはサッカーだった)

北海道中学校バスケットボール大会、いわゆる「全道」。

この年代の最高峰のタイトルであり、3年生にとっては最後の大会だから、会場のテンションは最高潮である。勝って歓喜、負けて涙。仲間たちとかわす熱き抱擁。大人が傍からみていると気恥ずかしいことでも何の衒いもなくできるその若さとエネルギーは、嫉妬心を抱くほどうらやましい。

 

釧路での大会を取材し、収録を済まし、解説を務めていただいた方とのバスケット談義の中で、こころに残ったことがいろいろとあった。

 

女子の決勝は帯広と旭川の中学の対戦となったのだが、帯広はJAL、旭川は旧共同石油(現JX、どちらもWJBLの名門チーム)のバスケットスタイルが長らく根付いているそうである。それは両チームが長らくそれぞれの地で合宿を行い、地域の方々と交流を進め、子どもたちにバスケットを教え続ける中で育まれた「財産」のようなものだという。サッカーには地域の生活を反映した独自のプレースタイルがあり、ひとつの文化となっていると聞いたことがあるが、バスケットもまた然りである。個人的にこの手の話は大好きだ。「人間の営みとしてのスポーツ」に関することを知ると、スポーツ実況に常に高いモチベーションが加わってくる。

 

また、高校の話になるが、沖縄で行われたインターハイで、女子の札幌山の手高校が、道内の高校史上初の全国制覇を成し遂げた。道内の中学生を鍛え上げ、頂点に立った快挙は関係者にとっても歴史的な出来事だったようだが、指導者である上島コーチは、「山の手でやりたい」という有望な中学生たちがいても、全てを受け入れることはなく、断ることもよくあるのだという。自分たちのチームを強くするには、有力選手がよそのチームに行かないようにする、すなわち自分たちで囲いこむのが最も簡単な方法なのはスポーツ界の常識だが、上島コーチはそれをよしとはしないそうである。「うちで試合に出られないまま3年間を過ごしてしまうぐらいなら、よそで試合に出てもっと伸びて欲しい。それが本人のためであり、北海道のバスケット界のためにもなるのだから。」全体のことに目を配りながらも「よそが強くなったら、うちはそれ以上に強くなる」という明確な「強さ」への欲求、これこそが栄冠の源なのだと実感する。

 

その札幌山の手高校に、17歳以下の日本代表候補で、将来の全日本の中心選手候補である、長岡萌映子という選手がいる。180センチを超える長身ながら、シュート、パス、そして惜しみない運動量を持つ選手である(去年のインターハイ北海道大会で実況した)。彼女の出身中学は、当時いわゆる道内を代表する名門中学ではなかったそうで、むしろそれが今の彼女にとってプラスになっているそうである。選手層が厚く、うまい選手が多いチームにいたら、勝つために「役割」を早くに限定され、プレーの幅の広がりはなかっただろうというのである。孤軍奮闘、何でもやる、その中でスケールの大きな選手へ飛躍する素地が作られた、これは幸運なことなのだろう。才能にあふれるものがその才能を伸ばす環境に出会えるかは、人類における永遠のテーマ。運と才能、点から二物を与えられた、北海道のバスケット界の逸材の将来に、期待は膨らむ。

 

こんなことを考えている間に、外の気温はぐんぐん上がっている。

きょう午後4時から放送の

「第40回 北海道中学校バスケットボール大会」は

涼しい部屋で見ていただくことをおすすめします。