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2016.9.10
氷にまつわる、あったかい話

一見、落語の小話のようなタイトルですが
北海道に暮らすものとして知っておきたい
先日、実際にあったお話です。

始まりは36年前。
1980年(昭和55年)、
北海道はカナダ、アルバータ州と姉妹提携を結びました。
その際、スポーツを通じた交流の一環として、
カナダの国民的人気スポーツである
カーリングの指導者講習会が、
道内の各地で行われました。
講師としてやってきたのは
元世界チャンピオンである
ウォーリー・ウルスリアクさんという方。
講習会に集った道内の指導者たちは
ウルスリアクさんに、近代競技スポーツとしてのカーリングを学び、
今では「カーリングのまち」として知られる北見市常呂をはじめ、
ここから、道内の各地に、カーリングは普及していきました。
その功績ゆえウルスアリクさんは
「日本カーリングの父」とも言われています。

今もカルガリー州のスタージョン郡というところに暮らす
ウルスリアクさんですが、
実は去年12月、火事で自宅が全焼してしまいました。
世界チャンピオンであった証の品や
北海道で指導をしたときの思い出の品など、
世界有数のカーラーであったことを示すものは
全て焼失してしまいました。

このことを知った北海道カーリング協会は
一計を案じます。
道内に残る、ウルスリアクさんにまつわる品を集め、
ジュニアチームの強化合宿が
同州カルガリーで行われるタイミングで
これらを持参し、届けることにしたのです。

現地9月6日(日本時間9月7日)、
北海道カーリング協会ジュニアチームのメンバー10人と
ウルスリアク氏、
そしてカーリング関係者や
アルバータ州のスポーツ関係者ら約60人が
田辺邦彦・在カルガリー日本総領事公邸に招かれ
贈呈セレモニーが行われました。

ジュニアチームの選手たちから
写真や盾、カーリングのオブジェなどの記念品を受け取った
ウルスリアクさんは、
そのお礼にと、焼失を免れた
1964年のインターナショナルトーナメントの
優勝トロフィーをジュニアチームに贈り
セレモニーは「相互贈呈式」となりました。

セレモニー②.jpg

(写真提供:在カルガリー日本総領事館)

929年6月30日生まれ。
御年87歳のウルスリアクさんは
10代の日本の若きカーラーたちを前に
「生涯を通じてカーリングの普及に努めてきたが、
この子たちはまさに将来の
日本カーリングを背負って立つ存在。
これからの活躍を楽しみにしている」
と感慨深く挨拶。

ウルスリアクさん③.jpg

ウォーリー・ウルスリアクさん(写真提供:在カルガリー日本総領事館)

これに対し、
男子の相田晃輔選手(常呂高・今年のユース五輪代表)は
「自分がカーリングを始めた常呂のカーリングホールには
ウォーリーさんの写真が飾ってあり、ずっと憧れの存在でした。
今日直接会って話ができて感激しています。
将来はウォーリーさんのような選手になりたい」、
女子の松澤弥子選手
(名寄高・同ユース五輪ミックスダブルス金メダル、
このブログでも依然紹介しました↓)は
http://www.tv-hokkaido.co.jp/announcer/daito/2016/08/post-143.html
「ユースオリンピックに出たときも
言葉や文化を超えて、
世界のいろいろな国の選手と
カーリングを通じて交流することができました。
競技カーリングが日本に伝えられていなければ
できなかった経験で、
改めてウォーリーさんに感謝したい」と話しました。

氷上で行うカーリングというスポーツは、
当然、冷気漂う中で競うものですが、
チームメイトとの綿密なコミュニケーション、
つまり、心を通わせることが大事なスポーツ。

そして「カーリング精神(The Spirits of Curling)」という、
競技規則の冒頭に掲げられている基本理念が
重んじられるスポーツでもあります。
その一節に
「ゲームはプレーヤーの技量を明らかにするためにある。
しかし同時に、
善きスポーツマンシップ、思いやりある態度、
そして誇り高い振る舞いが求められている。
この精神は、ルールの解釈や適用に生かすだけでなく、
氷の上にいる、いないに関わらず、
すべての参加者が行いの鑑とすべきものである」
と書かれている。

実際にカーリングの試合を観にいくと、
この精神が会場の隅々まで感じられ、
毎回、とても清々しい気持ちになるのですが、
きっとこの場も、相手への思いやりや誇り高さにあふれた
とてもいい雰囲気だったのだろうなというのが
伝わってきました。

そして、こうした精神も
合わせて広がるきっかけをつくった
ウルスリアクさんと北海道のカーリングとの関係を
心にとどめておきたいと思った次第です。

今回の記事は
北海道カーリング協会と
在カルガリー総領事館広報文化班副領事の
渡守麻衣さんのご協力をいただき
書かせていただきました。